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2008.4.1
隠れ肥満とメタボリックシンドローム【副院長】

隠れ肥満とは現在2つのことなる病態を呼称されています。

1のカテゴリーは体脂肪蓄積の程度を判定するBMIbody mass index)と実際の体脂肪測定値の解離から生まれたものです。体は栄養学的に生命の維持に必要な活性組織とエネルギーの貯蔵庫である体脂肪から組織されています。正常な体では活性組織は約82%で、体脂肪は約18%とされています。本来‘肥満’とは体脂肪が増えすぎた状態と定義され、男性では25%、女性では30%を超えた場合とされています。この定義に基づいて体脂肪蓄積の程度を示す肥満の判定基準BMIでは正常体重以内なのに体脂肪率を測定すると肥満と判定される状態を呼んだものです。

2のカテゴリーではBMIでは正常体重以内なのに腹腔内の内臓脂肪の周囲に脂肪が過剰に蓄積する内臓肥満を呼ぶものです。本来肥満の判定は定義からは体脂肪率かの測定によるべきでしたが、その正確な測定法が困難だったため各国様々な基準が用いられていました。(標準体重法、体格指数法、皮下脂肪厚など)

体格指数の中でBMI法が体脂肪を最も反映しているという報告に基づき欧米では1980年代後半頃より使われていましたが、日本では旧来標準体重法を使用しており、BMI法を使用するようになったのは1997WHOが肥満の判定法を国際的に統一するようBMI法を推奨してからです。WHOは欧米白人のデータに基づきBMI30以上を肥満の判定基準としましたが、日本肥満学会では日本の疫学データに基づきBMI25以上を日本の判定基準としました。体脂肪測定により肥満を判定すると、BMIでは見過ごされる肥満を見出すことが出来るとしたのが第1のカテゴリーです。

一方肥満の生活習慣病へのリスクは体脂肪蓄積の程度ではなく、体脂肪の蓄積部位により異なるというデータが報告され、上半身肥満のほうが下半身肥満よりも、また、上半身肥満は腹部CT検査により内臓脂肪肥満と皮下脂肪肥満に分けられ、内臓肥満のほうが生活習慣病合併の高リスク病態であるということがわかってきました。

これが第2のカテゴリーの隠れ肥満です。この内臓肥満はすでに判定基準も世界各国で決められていますので、隠れ肥満という言葉は現在不適切です。内臓肥満(国際的には上半身肥満、あるいは腹部肥満)は肥満がもたらす代謝異常の主因となるものであり、虚血性心疾患の高リスク症候群であるメタボリックシンドロームの根幹を成すものであり、原因、病態、対策などの研究がさらに進むと考えられています。

日本においても内臓肥満と体脂肪蓄積程度(BMI)及びそれに随伴する生活習慣病境界値を指標と減量による生活習慣病予防対策が20084月より国を挙げて実施されることとなりました。

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